知人の紹介で
 クリスマスを超え、正月を超え、湊斗と二人三脚で受験に向けて励み、とうとう一月の共通テストも迎え、最初の本番を湊斗は乗り越えた。自己採点の結果はかなりのもので、今目指している大学どころか遥か上のランクも目指せるレベルだった。

 あとは二次試験で実力が発揮できれば、きっと合格できるだろう。本当にもうゴール目前だ。

 合格したら、めいっぱい湊斗を祝ってやろうなんて純花は考えていたが、湊斗からもその要望がやってきた。

「純花さん。合格したらまたご褒美くれる?」
「もちろん。何がいい?」
「じゃあ、旅行に連れてって?」

 そのとんでもない要望に純花は目を見張った。それは許されるわけない。二人は家庭教師と生徒なのだ。純粋に労う気持ちだったとしても、二人の関係を疑われ得るその行動はとれない。それに純花には純粋な気持ちでいられる自信もない。だから、その要望に応えることは純花にはできないのだ。

「……それはだめだよ。ご両親がお許しにならないよ。私もそこまでの責任を負うのは難しいから。ごめんね?」
「どうしてもだめ?」
「ごめん。それはどうしてもだめ。またご飯になら連れていってあげるから。ね?」
「……じゃあ、何か純花さんの持ち物がほしい」
「え、私のもの?」

 急に要求レベルが下がり、純花はかえって困惑した。持ち物とはどういうものを言っているのだろうか。

「何でもいいから、純花さんが持ってるものが欲しい」
「何でもって言っても……」
「純花さんが使ってるそのシャーペンとか消しゴムとかそういうのはだめ?」
「こんなものでいいの?」
「うん」

 驚くほどかわいらしい要求だ。このくらいいくらでもあげて構わないが、さすがにこれが合格祝いはないだろう。合格祝いにはもっとちゃんとしたものを贈りたい。

「まあ、それはいいけど……合格祝いはもっとちゃんとしたものあげたいから、このシャーペンと消しゴムは受験のお守りとして今あげるよ」
「え、いいの?」
「うん、どうぞ」
「ありがとう、純花さん!」

 純花のシャーペンと消しゴムをもらって大喜びしている湊斗がかわいくて、純花は声を出して笑っていた。
< 58 / 179 >

この作品をシェア

pagetop