知人の紹介で
 それから少しのときが経ち、いよいよ二次試験前日となった。

「いよいよ二次試験だね」
「うん。緊張する」
「湊斗くんなら大丈夫だよ。リラックスして臨もう」
「うん。じゃあ、いつもの力が発揮できるようにまたぎゅってしてくれる?」
「いいよ」

 いつものように座っている湊斗を覆うように抱きしめようとしたら、湊斗はなぜか立ち上がり、純花に向き合うと両手を広げてきた。

「え?」
「してくれるんでしょ?」
「……うん」

 どうやら今日は立って抱きしめてほしいようだ。自分よりも背の高い湊斗を立った状態で抱きしめるのは、どうにもドキドキするが、そんな胸の鼓動を悟られないよう、純花は何でもない振りをして湊斗を抱きしめた。

 いつもはただ抱きしめられているだけの湊斗だが、今日は純花の背に腕を回してくる。こんな体勢になってしまえば、嫌でも湊斗の存在を意識してしまう。

 それでも湊斗を応援したい気持ちは本物だから、その気持ちだけを前面に出して、純花は湊斗へ激励の言葉をかけた。

「……頑張れ、湊斗くん。応援してるからね」
「うん。ありがとう、純花さん。ありがとう」

 湊斗は背中に回した腕の力を一瞬だけ強め、そのあとはすぐに離れていった。

「はあ。もう少しで純花さんの家庭教師も終わっちゃうと思うと淋しいな」
「そうだね……でも、湊斗くんのことは卒業してもずっと応援してるから。それに合格すれば同じ大学生だよ。そうなったら私はすごく誇らしい」
「うん。僕もそうなれるように頑張る。純花さんの後輩として会いに行くから」
「待ってるよ。未来の後輩くん」

 そして、翌日に湊斗は二次試験へと挑んでいった。

 あとから湊斗に聞いた話によれば、どの教科もしっかりと解けた手ごたえはあったらしい。変なミスさえしていなければきっと大丈夫だろう。

 それでも合格発表の日までは純花も湊斗も落ち着かなかった。滑り止めの後期試験へ向けてまだ頑張ってはいたが、やはり本命のほうが気になるようで、時折集中力を切らしているようだった。
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