知人の紹介で
「だからって……そもそもなんで録音なんて……」
「ごめんね。でも、録音してたのは防衛のためだったんだよ」
「防衛?」
「純花さんの前に何人か家庭教師として来た人たちがいたんだけど、その人たちが僕の容姿を気に入って迫ってくることがあって……それで自己防衛のために会話を全部録音してた。親に聞かれたらまずいようなことを全部晒すって言って撃退してたんだよ。まあ、後半はただ純花さんの声を聞きたくて録音してたけど」

 今初めて真相がわかった。一週間もしないうちに断られると湊斗の母は言っていたが、一週間もしないうちに湊斗に手を出そうとした輩を湊斗が追い返していたというのが真実だったのだ。その真実を知り、純花は強く胸が痛んだ。

「……そうだったんだ。それは怖かったよね。私のこともきっと怖かったよね」
「最初はね。でも、純花さんは僕の素顔を見ても何も変わらなかったでしょ?」
「え?」
「うっかり僕が前髪あげて、眼鏡外してる姿見せてしまっても、何も態度が変わらなかった。だから、純花さんなら大丈夫だって思ったんだよ」

 そういえばそんなこともあったなと思いだす。あのときは湊斗がひどく動揺していたからすぐに立ち去ったのだ。まさかこんな事情があるとは思いもしなかったが。

「そっか。あのとき湊斗くんすごく動揺してるみたいだったから、触れないほうがいいんだろうなって思ったんだよね。それに湊斗くんは確かにきれいな顔してるけど、それを知る前から湊斗くんのことはかわいいって思ってたよ? 一生懸命頑張るいい子だなって思ってた」
「純花さん……そうやって僕のことちゃんと見てくれる純花さんだから好きになったんだよ。もう純花さんが離れていかないようにって必死だった」

 そんなに真っ直ぐに好きだと言われるとどうにも照れくさい。恥ずかしくて何も言えないでいれば、湊斗はさらにとんでもないことを告白してきた。
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