知人の紹介で
「あなたたち、何やってるの? その子嫌がってるでしょ? 離しなさい!」

 若い女性を無理やり連れ去ろうとする数人の男に千景は食ってかかった。

 飲み会帰りに駅へ向かって歩いていれば、女性が男性に取り囲まれているのが見えて、千景はいつものごとく後先考えずに駆けつけたのだ。そうして今の状況が生まれている。

「あ? なんだよ。邪魔すんな」
「嫌がってる子に無理やり迫るなんて犯罪よ」
「何? 警察でも呼ぶ? でも、俺らその子の知り合いだし、ちょーっとお話してただけだから、何もやましくねえよ?」

 ニヤニヤと笑いながら言うのがとても気味悪い。一ミリも悪いとは思っていないようだ。

「嘘よ。どう見ても嫌がってるじゃない。いいから離しなさい!」
「通りすがりのあんたにわかるわけねえだろ? いいからとっととどっか行け。じゃねえと痛い目合わすぞ?」

 二人の男が千景のほうへ近づいてくる。それでも千景は困っている女性を放って逃げることなどできず、まだ立ち向かった。

「そんなことしたら訴えるわよ。とにかくその子を離しなさい!」
「はあ、もういいわ。おい、もう離していいぞ」
「え、でも……」

 ようやく話が通じたと思ってホッとしていれば、男が直後に放った台詞に千景はその身を強ばらせた。

「このお姉さんが代わりを務めてくれるみたいだからよ」
「え……」

 迫られていた女性は千景のほうを心配そうに見つめながらも、男から解放されるとその場を走って逃げた。

 男たちは千景のほうへにじり寄ってくる。これはまずい。自分も急いで逃げなければと踵を返す。だが、ヒールのある靴で急いで駆けだそうとすれば、思わず足をくじいてしまい、千景は呆気なく男たちに捕まってしまった。

「逃げられると思うなよ?」
「ちょっ、離して!」

 必死に掴まれた腕を振り回すが、男の力には敵わない。さすがにこのままでは危険だ。こいつらに連れ去られてしまう。自分一人ではもうどうにもならないから、とにかく誰かに助けを求めようと千景は大声で「助けて」と叫んだ。

 そんな千景に男どもは慌てて千景の口を塞ぎにかかる。それでも必死に抵抗してもう一度「助けて」と叫ぼうとしたら、それよりも早く千景の前に救世主が現れた。
< 79 / 179 >

この作品をシェア

pagetop