知人の紹介で
 そこからはお互い何もしゃべらなかった。車は千景の知らない道を走っていく。そうしてたどり着いたのはこれまた高級そうなマンションで、千景は和巳にしっかりと手を引かれながら、そのマンションの一室へと連れ込まれた。

 中へ足を踏み入れれば、すぐに口づけが降ってくる。玄関先で数分の口づけに耐えれば、和巳は玄関から上がるよう目で訴えてきた。大人しく靴を脱いで上がれば、真っ直ぐに寝室へ連れていかれ、大きなベッドへと横たえられる。そういうつもりで連れ込まれたのだとわかってはいるが、好きな男とのその行為に勝手に羞恥心と喜びとが湧き上がっていく。真っ直ぐに視線を合わせているのが耐えられなくて、思わず顔を横にそらせば、和巳はおかしそうに喉を鳴らしながら笑いだした。

「くくっ。何恥ずかしがってるんだ? 初めてではないんだろう?」
「あなたとは初めてなんだから、しかたないでしょ……」
「悪くないな、そういうしおらしいお前も」

 和巳は千景の羞恥心を煽るようにわざとらしく千景を撫でながら口づけてくる。

「やめてよ。恥ずかしいから」
「かわいいお前が悪い」
「もうっ」
「いいな、その表情。そそる」
「ばか」
「ふっ、かわいい。そんな憎まれ口を叩いてももう逃がしてはやらないからな。大人しく抱かれろ」

 そこからはもう何も考えられなかった。ただただ和巳が与えてくれるものを感じていた。

 ベッドで体を重ね、風呂場に移動してはまた体を重ね、さらにまたベッドに戻っては千景はその体を和巳に貪られ、最後は泥のように眠っていた。
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