知人の紹介で
「お前が望めばいい。それだけだ。お前が望めば全部くれてやる」
「全部って……」
「俺の人生全部くれてやるって言ってるんだよ」

 この男は突然何を言っているのだろうか。急に飛躍しすぎている。そういうのはもっと前段階をこなしてから言うものだ。

「何それ。なんでよ……」
「お前が好きだからに決まってるだろ?」

 初めて和巳から発せられたその言葉に千景の胸はどうしようもなく満たされていく。それが欲しかったのだ。その言葉が欲しかった。和巳の想いが欲しかった。同じ気持ちなのだと知りたかったのだ。

 でも、ずっと中途半端な関係を続けてきたから、千景はなかなか素直に応えられない。

「……決まってるって、今まで一度も言われてない」
「なんだ。お前そんなことで拗ねてたのか? ははっ、かわいいやつだな」
「拗ねてなんかない……」
「千景。千景が好きだ。いいから俺のところに落ちてこい。お前を愛してやる」

 随分と強い口調だが、その声音も表情も優しい。千景が好きだと言っている。嬉しくて嬉しくてたまらないが、千景の口からはまたもや憎まれ口が口をついて出てしまう。

「なんでいつも上から目線なの……ばか」
「ふっ。まったく面倒くさいお姫様だな。ほら、来い。お前が欲しいもんくれてやるから」

 両腕を広げる和巳の元へそっと身を寄せてみれば、和巳はその腕に千景を抱きながらも、しっかりと千景を見つめて甘い言葉を吐きだした。
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