両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 あきれ顔の悠希に、翔真さんは持っていた傘を渡す。
「母さんたちが口うるさく言いすぎたと反省していたぞ。たまにしか顔を合わせないんだから、あまり心配させないように」
 悠希は翔真さんから傘を受け取ると、ベンチから立ち上がった。
「はいはい。兄貴を見習って親孝行な息子を演じてやるか」
 そうぼやきながら、悠希は東屋を出て傘をさして歩き出す。
 翔真さんは苦笑いで彼を見送ってから、私を振り返った。
「じゃあ、俺たちも戻ろうか」
 そう言って私に傘をさしかける。
「あ、ありがとうございます」
 お礼を言って彼の傘に入れてもらったけれど、悠希から聞いた言葉が頭から離れず鼓動は速いままだった。
 私の表情がすぐれないのに気付いたのか、翔真さんが眉をわずかによせ心配そうにこちらを見る。
「彩菜、どうかした?」
「いえ。なんでもないです」
 動揺を悟られないよう必死に笑顔を作り、首を横に振って誤魔化した。だけど、心の中は翔真さんへの罪悪感でいっぱいだった。

◇◇◇

 ――約一年前。
 父から「大切な話がある」と切り出された私は、改まってなんだろうと思いながら両親と向かい合って座った。
「彩菜。吉永家と縁談の話が出ているんだけど、どう思う?」
 父のその言葉に、私は驚いて目を丸くした。
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