両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 ほとんどの会社は快く原稿の執筆を引き受けてくれたけれど、一社だけ掲載順や文字数など細かなことにひっかかり話が進まない会社があった。その対応に悩んでいたのも事実だった。
「そっか。私に手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとうございます」
 うまく誤魔化せたとほっと胸をなでおろしたとき、「――で。本当はなにに悩んでいるの?」と聞かれ驚いて咳き込みそうになった。
「本当はって……?」
「仕事が忙しいのは事実だろうけど、がんばり屋で前向きな彩菜ちゃんはそれだけで食欲がなくなるほど悩まないでしょう?」
 するどい指摘に黙り込む。
「副社長とケンカでもしたの?」
「いえ。翔真さんはいつも紳士で優しいのでケンカなんて」
「じゃあ、なにがあったの?」
 優しい口調で問いかけられた。誤魔化すのは無理だろうと思い、うつむきながら口を開く。
「……私と結婚する前、翔真さんには好きな人がいたそうなんです」
「まさか」
「悠希から聞いたんです。ずっとご両親の言うことを聞いてきた翔真さんが、その人と結婚するために一度だけわがままを言ったって」
 常に周りに気を使う翔真さんが自分の気持ちを押し通そうとしたなんて。それだけ彼女のことが好きだったんだろう。
 そう思うと、胸が苦しくなる。
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