両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 真剣な口調で言われ、私は「いえ」と首を横に振った。
 説明も謝罪もいらない。悪いのは私だから。
 私が翔真さんと結婚したいと言い出さなければ、こんなことにはならなかったんだ。
『彩菜』
 私の名前を呼ぶ彼の声が、世界で一番好きだ。でも大好きなその声を聞くと、罪悪感と後悔で胸が激しく痛んだ。
「もう翔真さんとは一緒にいられないです。私たち、離婚しましょう」
 心が引き裂かれるような悲しさを感じながらそう告げる。
『待って、彩菜――』
 翔真さんは必死になにかを伝えようとしていたけれど、最後まで聞かず電話を切った。
 彼が大好きだから、幸せになってほしい。だけど、翔真さんの幸せは私と一緒にいることじゃない。
 私が彼のためにできるのは、離婚してあげることだけだ。わかっているのに、涙があふれて止まらなくなる。
 彼からの連絡でこれ以上気持ちが揺らがないように、スマホの電源を落とした。
 翔真さんが帰って来るのは二日後の日曜日。それまでに、自分にできることをしよう。
 そう決意して歩き出した。
 自宅のマンションへ帰った私は、住み慣れた部屋を見渡し今までの半年間をぼんやりと思い出す。
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