両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 いや、知らなかったんじゃなく、俺が知ろうとしなかったんだ。
 十八歳になったときに、両親から俺は母の子ではないという話をされた。吉永家に引き取られた経緯を説明しようとしてくれたけれど、俺が『必要ありません』と聞くことを拒否した。
 両親の口から『お前は捨てられた子どもだ』と告げられるのが怖かったから。
「俺はずっと、誰からも必要とされていないんだと思ってた」
 うつむきながらつぶやくと、彩菜が「そんなわけないです!」と力強く言った。
「お義父様もお義母様も悠希も、みんな翔真さんが大好きです。もちろん私も」
 彩菜がまっすぐに俺を見つめる。
「彩菜も?」
「私もずっと翔真さんが好きでした」
 彩菜から告げられた言葉が信じられず、目を瞬かせる。
「どうして? 彩菜が好きなのは俺じゃなく悠希だろ?」
「え……?」
 ずっと彩菜を好きだったけれど、伝えても困惑させるだけだろうと気持ちを抑え続けて来た。
 けれど一年前、悠希のアメリカ赴任が決まったのと同時期に藤沢家の負債について知った俺は、このタイミングなら彩菜を自分のものにできるんじゃないかと結婚を持ち掛けた。
 我ながら自分の計算高さに嫌気がさす。
 彩菜は慌てたように首を横に振った。
「ち、違います! 私が好きなのは翔真さんです!」
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