両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 どうしよう。頬が熱くて前を向けない。ドキドキしすぎて心臓の音が翔真さんにまで聞こえてしまいそうだ。
「ええと」
「彩菜。ちゃんと答えて。悠希をうちに泊めなかったのはどうして?」
 優しい声で問い詰められ、私は心の中で白旗を上げる。
「その……、翔真さんに抱いてもらいたかったからです」
 弱々しい声で言うと同時に、翔真さんが息を吐き出す音がした。あきれられただろうかと不安になっていると、視界がぐるっと回った。
 翔真さんが私の顔の横に手をつき、こちらを見下ろしていた。ソファの上で組み敷かれているこの状況を理解して、鼓動が速くなる。
「え、あの……。翔真さん……?」
 上ずった声で名前を呼ぶ。そんな私に向かって翔真さんが色っぽい笑みを浮かべた。
 彼は私の左手を持ち上げる。そこにはもらったばかりのブレスレットがあった。
 翔真さんはこちらを見下ろしながら、ブレスレットがはめられた私の手首にキスをする。挑発するような男っぽい彼の表情に、「んん……っ」と甘い声がもれた。
 萌絵さんから言われた『手錠をかけて鎖で繋いでおきたいって願望のあらわれでしょ』という言葉が頭をよぎる。
 翔真さんが私にそんな執着を抱いていてくれたらいいのに。そんなことありえないけど。
< 85 / 191 >

この作品をシェア

pagetop