鏡と前世と夜桜の恋

「嫌よ!私はみんなで仲良くしたいの!なんでそんな酷い…」

「お前が悪いんだろ!お前が… 」

咲夜は出かけた言葉を慌てて飲み込む。

私が?さくは突然、どうしてそんなことを言い出すの?

咲夜の言葉に目に涙を浮かべ雪美は背を向け思わずどこかに駆け出した。


「戯け者が…」

蓮稀は咲夜に対し吐き捨てるように言い、ため息をひとつ落とす。その声音は冷たさより " やれやれ " と、諦めに近い。

雪美の姿を追うべきか、放っておくべきか… 自分が動いていい物なのか悩んだ結果、訛りのように動かぬ咲夜をその場に残し、蓮稀は雪美を追いかけることにした。


「っ… 」

雪美を引き止めたいのに、咲夜の足は地面に縫いとめられたまま。

身勝手な我儘なのはわかってる、これは完全に俺の一方的な嫉妬… 自分が情けなさ過ぎて雪美を追うことが出来なかった。

雪美の後を追う蓮稀後ろ姿を見ながら、咲夜の胸の奥底は兄に対して相反する感情が渦巻く…


雪美を1人にしないでいてくれる安堵、そしてその役目が自分ではなく蓮稀が担っていることへの嫉妬、この2つがぶつかり合い葛藤を続ける。

「戯け者か… 」

思わず口元に笑みが浮かぶ。

けれどそれは皮肉でも強がりでもなくただ自分に言い聞かせる苦い笑みだった。


立ち止まった足が前へ進むことを拒む。

それでも視線は、雪美を追い続ける蓮稀の姿を追いかけてしまう… 何故俺はあの背を見送ることしかできないのか。

咲夜の胸は苛立ちと悔しさ、そして後悔で締めつけられていた。
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