鏡と夜桜と前世の恋
脱獄の果て


牢屋敷から抜け出した雪美が真っ先に向かったのは、咲夜が捕まっている町奉行所…



雪美は門の前に居る見張りの男に " 入れて下さりませんか?" と、上目遣いで猫立て声を出し、色仕掛け。



寄り添い、撫でるように体を密着させ…



まんまと雪美に骨抜きにされた見張りの男は " 直ぐ戻って来い " と、立ち入りを許可。



男なんて下心を煽ればちょろいものよ " べーっ " と、舌を出し笑う雪美は、町奉行所の門をくぐり屋敷に堂々と侵入すると、蓮稀の上着に入っていた懐のナイフを取り出し、警戒しながら厠 (トイレ)に向かう。



" さく、私が必ず助けるから "



結った長い髪を下ろした雪美は、手に持っているナイフでばっさり切り落とす。







尻まであった綺麗な長い髪は短くなり、蓮稀の羽織りを着ているせいで小柄な男の子の様な風体に。



咲夜が囚われた場所に来た雪美は着物を整え、深呼吸すると思いもよらぬ大胆な行動に出た。



「… 政条咲夜の兄だ」



声を低くし、見張りの男に話し掛けた雪美は、顔を極力合わさない様にして蓮稀になりすます。



「政条… は、蓮稀様!?」



雪美を蓮稀だと思い込んだ見張りの男は頭を深く下げた後 " ご案内します " と、言って道を開け、中に案内してくれた。



「ご苦労ご苦労」



声を低く話す雪美に対して男は " それでは戻ります " と、出て行った。



見張りの男に雪美だとバレなかったのは蓮稀の羽織り… 政条家の家紋のおかげだろう。


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