鏡と前世と夜桜の恋
-- 数ヶ月後。
" 大切な話しがある "
両親に呼ばれた雪美は父の自室にいた。

「雪美。お前は6歳… まだ早いが政条家の次男から縁談の話しが来ている、お前には結納の儀に出てもらう」
「結納の儀… って何ですか?」
「簡単に言えば、雪美がお前がお嫁に行ける歳になれば結婚してもらう」
まだまだ幼い雪美は、縁談や結納の儀の意味が全く分からない…
政条家の次男ってさくのことだよね?食事会?さくとならきっと楽しいと思い " はい!" と、元気に返事していた。
「明日は次男と顔合わせに行く大切な日、今日は大人しく家にいなさい」
" 私が大人しくしてると思う?"
大人しく部屋に戻ったフリをした雪美は、べーっと舌を出し父と母の目を盗んで部屋から出るとお団子を買いに行く。
雪美はどこに行くにも紙に包んで持ち歩くほどみたらし団子や三色団子が大好きな女の子…
「… あ!!」
買った団子を大事そうに抱えご機嫌の雪美を見かけた咲夜は思わず声を掛けようとする。
あんなに団子を抱えて… 今日も可愛いな、雪美の姿を見るだけで口元が緩んでにやにやしてしまう。
「ゆ… 」
まさに同じタイミングだった。
蓮稀の姿を見つけた雪美は嬉しそうに " 蓮稀!! " と、可愛い笑顔で駆け寄り蓮稀を目の前にしてモジモジしたり緊張ながらも楽しそうに話している。
完全に咲夜の一目惚れだった。
約束を交わしたあの日から雪美は「さく、さく」と、何処にでも着いてくるようになり… そんな無邪気な雪美が可愛くて、その気持ちは愛おしさに "愛 " に変わった。
父にゆきを嫁にしたいとお願いしたけど、もしかするとアイツは蓮稀のことを慕っているのかもしれない。
「……。」
蓮稀に向ける雪美の笑顔を見ると胸が痛む、年頃になると恋はする。けど、何で?どうしてよりによって兄の蓮稀なんだ、俺がゆきを独り占めしたいのに。
俺は2番目… いや、そんなはずはない。ゆきと出会って約束を交わしたあの日から毎日のように一緒にいたのは俺なんだよ。
口数は少ないものの蓮稀は、無邪気に話す雪美に微笑みぽんぽんと頭を撫でる。
「子供扱い!やだっ!… バカ// 」
「嬉しいと顔に出ているぞ」
「うるさいっ// 嫌なものは嫌なの!」
頬を膨らませ真っ赤になる雪美の姿を見た咲夜は、2人にモヤモヤしながらも声は掛けず、黙ってその場を後にした。