青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました
 二度目の口づけを交わした時、蒼馬の意識が弾け飛んだ。

 あらがえぬ魔法にかかったかのごとく野性的な本能をかき立てられ、悪魔に心臓を握りつぶされたように血流がほとばしる。

 獲物を捕らえた狼のように、服を剥ぎ取り、押し倒し、転がし、無理矢理突き刺し、己の快楽に従うままにむさぼり尽くしてしまいたい。

 そんな衝動に突き動かされ、蒼馬は血走った目で史香を見つめながらもう一度力任せに抱きしめた。

 どこから立ち上るのか、ふわりと女の香りが鼻をくすぐる。

 その瞬間、天界から下された雷が命中したかのように、ひれ伏したいほどの神々しさに打ちのめされ、蒼馬は冷静さを取り戻していた。

 馬鹿な……。

 紳士でいろ。

 リードできなくてどうする。

 優しく丁寧に服を脱がせていく手がもどかしい。

 ――なんだよ。

 これじゃ、まるで、俺が初めてみたいじゃないか。

 何がこれほど男の本能をかき立てるのかがまるで理解できない。

 やることなんて決まっている。

 今までだって全部同じだったじゃないか。

 何度繰り返したところで、いつも最後はむなしさを抱えた賢者にもどるだけだ。

 それが男ってものなんだろ。

 なのに、どうして。

 こんな焦りと困惑は今まで経験したことがなかった。

 服を脱いで飛び込んでいきたい。

 手かせをはめられ、目隠しをされて引き回されているかのように、自分ではどうしようもない状況に陥っている。

 自分自身を服ごと引き裂いてしまいたいほどの衝動にあらがえず、蒼馬は史香をベッドの上に押し倒した。

 その瞬間、うずくまるような姿勢で芋虫のように転がると、史香は蒼馬に背中を向けてしまった。

 ――しまった。

 そう思った時はすでに遅かった。

 違うんだ。

 背中に寄り添うと蒼馬は史香の肩と腰に手を当てた。

 逃げないでくれ。

 拒まないでくれ。

 怖がらせてしまったことを後悔しつつ、同時に冷静さを取り戻す。

 俺は愛することもできないのか。

 俺には愛される資格もないと言うのか。

 愛が、おびえている。

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