宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


 急に泣き出した私を見て、宝さんは明らかに慌て出す。


「どうした!?どこか痛いのか?」

「ちがいます……」

「じゃあ、どうして」

「……もうっ、いわせないでくださいよっ」


 真っ赤になった鼻を見られたくなくて背中を向け、スーツの裾で涙を拭っていたら宝さんが自分の服の袖を当ててきた。


「すまない、ハンカチがなくて……」


 申し訳なさそうにしながら袖で涙を拭ってくれる。

 不器用ながらいつも私のことを考えてくれる。
 私のことを見ていてくれる。

 真っ直ぐで優しいあなたのことが――


「……すき」

「…………え、」


 あ……っ!!

 私は思わず両手で自分の口を押さえた。


「結瑠、」
「すみません!仕事に戻ります!」


 逃げるように速歩きでその場から立ち去った。

 そのままトイレの個室に入り、はーーーーっと深い溜息をつく。


「〜〜……っっ、どうしよう……」


 まさか思わず出てしまうとは思わなかった。
 宝さんの真っ直ぐさが移ったのかもしれない。

 でも、そうなのか。
 口に出してみて改めて認識した。

 私は宝さんのことが好きなんだ。

 人としてだけでなく、異性として。
 恋愛的な意味での好き。


< 102 / 167 >

この作品をシェア

pagetop