私が一番近かったのに…
「そこまで言われちゃうと、断りづらいな。でも大丈夫?私とやりすぎて、彼女とできなくなったりとかしない?」

「それは大丈夫。彼女とは健全なデートしかしない約束だから」

聖なる夜に本命としないの?という疑問は残ったが、これ以上は聞かないことにした。
なんだかセフレという立場上、踏み込んだ事情を聞くのはタブーのように感じた。

「愁が健全なデートって、なんか意外」

「うっせーな。いいだろう、別に。
とにかく、それに関しては問題ないってことだ」

「問題はないけどさ。私との約束は守れないんだなって思ったよ」

ってきり、最後まで頑張るものだとばかり思っていた。
一度決めたことは、最後まで貫き通す男気があるって、信じていたから。

「これでも俺、結構、我慢してたと思うんだが。
もしかして、俺とやりたくない?」

そんなわけない。本音を言えば、もっと触れ合いたい。もっとあなたを感じていたい。
でも、少し試してみたくなった。約束を果たすかどうか…。
ここまで頑張ってきた姿を、一番近くで見てきたからこそ、あともう少しだけ頑張って欲しいと思う気持ちと、頑張った愁にご褒美をあげたいと思う、複雑な気持ちだ。

「ううん。そんなことないよ。どちらかというとしたいかな」

結局は私とやりたいだけ。そんなことは分かっている。
それでも、どんどん膨らむ気持ちを、私は誤魔化せなかった。

「今日の幸奈は、なんだか意地悪だ」

からかいすぎると、すぐ不機嫌になってしまうところも可愛い。
もっとからかいたくなるが、これ以上からかうと機嫌が悪くなるので止めておこう。

「ごめん。ちょっとだけからかいたくなっちゃって。
したくないわけじゃないよ。私でいいのかなって思っただけ」

もっと可愛い聞き方はないのだろうかと、自分でもそう思う。
愁もそうだが、私もとことん不器用だ。

「俺はお前がいいから、誘ってるんだが」

理屈なんて愁には存在しない。本能の赴くままに行動するのが愁。
こんな質問をする方が、野暮であった。

「そう…だよね。だって、私達はセフレだから」

そう。私達は、ただの友達ではない。
それは愁に宣言しているようで、自分自身にも宣言していた。
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