私が一番近かったのに…
この気持ちに気づいてほしい自分と、気づいてほしくない自分がいる。
面倒くさい女だと思われても仕方ない。それが紛れもない、私の素直な気持ちだから。

「もう!愁のせいだからね!私は何も悪くないもん…」

本当は愁のせいじゃないってことくらい、分かってる。
本当はホテルに着いた時点で、そうなることを期待していたのかもしれない。

「分かってる。俺のせいだ。
だから、幸奈の好きなようにしてくれて構わない。俺は幸奈のいうことなら、何でも聞くから」

私が不機嫌になると、すぐに謝ってくれる。
でも、こんなに優しくされると、胸が締めつけられる。
私にだけ優しかったら…なんて、期待しても仕方のないことを、期待してしまう。

「私の好きなようにしてもいいなら、一つだけお願いがあります。
この旅行中、昼間にそういうことをするのは禁止。以上です」

酷なことを要求していると、自覚している。
わざわざ京都に来たのは、観光目的もあるが、人目を気にせずに、堂々と一緒に過ごすことも目的のうちの一つだ。
つまり、身体を重ねることも目的の一つなわけで。その目的を禁止するのは、愁にとって酷な話なのであった。

「悪い。もしかして、怒らせちゃったか?」

愁は何も悪くない。小さなことで、目くじらを立てる私が悪いんだから。

「怒ってないよ。ただ、京都観光したかっただけ」

どんなに言い訳を取り繕っても、愁には私が怒っているようにしか見えないんだと思う。
本当に可愛げがないなと、自分でもそう思う。もう少し可愛く甘えられたらよかったのに…。
こんな簡単なこともできない自分が、もどかしく感じた。
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