私が一番近かったのに…
「先輩、幸奈はエロい女じゃないですよ」

息を切らしながら、愁が駆けつけてくれた。
私の肩に手を置く先輩の手を振り払い、私の腕を引っ張った。

「行くぞ。店長が今来てるから、報告する」

先輩を置き去りにし、二人で飛び出した。
バックヤード兼、休憩室に店長がいたため、そこで軽く事の説明をした。

「…ということがありました。そろそろ彼をクビにするべきかと」

今まで全てのことを知らないでいた店長は、驚いた顔をしていた。
それもそうだ。表向きは真面目で通っているのだから、驚かずにはいられないであろう。

「…そうだったのか。今まで辞めていった人達全員が、一身上の都合って言ってたから、バイト自体が楽しくなくなっちゃったのかな?と思いきや、彼との関係のことで悩んでいたのか」

気を落としていた。それもそうだ。自分がもし、もっと早く気づいていたら、辞めなくてもいい人達が、辞めずに済んだのかもしれないのだから。

「大平さん、岩城くん、教えてくれてありがとう。この後、彼とちゃんと話し合ってみるよ。辞めてもらえるように」

困った時には、すぐに動いてくれる店長のことを、とても頼もしい人だなと思った。
初バイトがここでよかった。こんなに良い上司は他にいないかもしれないと、恵まれた環境に胸が熱くなった。

「よかった。あの先輩がついに、いなくなるかもしれなくて…」

どうやら愁の中では、ずっと気がかりだったようだ。
愁はどうしてそこまで、先輩を毛嫌いするのだろうか。昔、先輩と何かあったのだろうか。

「うん。本当によかった。でもどうして、愁はそこまで先輩のことを嫌ってるの?」
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