私が一番近かったのに…
何かなければ、そこまで毛嫌いする理由もない。もしかして、過去に狙ってる女を奪われたことがあるとか?

「先輩とは特に何もねーけど、俺がここに来た時から、よくない噂を聞いてたから。ずっと心配だったんだ。幸奈のことが」

まっすぐ見つめられながら、そう告げられた。なるべく私があの先輩と接点を持たないよう、愁はずっと気にかけてくれていたんだ。その優しさに、涙が溢れそうになった。

「全然知らなかったよ。今までずっと心配してくれてありがとう」

私のありのままの気持ちを、そのまま愁に伝えた。
以前と比べて、最近は素直になったと思う。相変わらず、肝心なことは未だ言えずじまいだが…。

「そんなの当然だろ。だから気にすんな」

さっき先輩に触れられた肩に、愁が触れてきた。まるで先輩の感触を消すかのように…。
愁の手の温もりは心地良くて、私を安心させてくれた。
さっき先輩にされたことは忘れられないが、愁に触れられたことで緩和された。

「幸奈、今日はもう上がれ。俺から店長に話しておく。
あと、一緒に帰ろう。家まで送ってく」

私の頭を優しく撫で、そのまま去っていった。
店長の後を追いかけていき、どうやら話をつけてくれたみたいで、本当に早く上がらせてもらうことになった。
そして話し合いの末、先輩はクビになった。
しかし、今すぐ辞めさせることは難しいみたいで。一先ず、その先輩が辞めるまでの間、私は一時的にバイトをお休みする形となった。
勿論、このことは会社の上の者にもちゃんと報告を済ませたとのこと。
いくら労働基準法があるとはいえども、事が事なので、なるべく早急に事を片付けるといった形で、丸く収まったみたいだ。
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