私が一番近かったのに…
愁が求めてくれないのなら、自分から…と思っていた矢先に、愁の方が先に壁を壊した。
愁に抱いてもらえるのなら、もうどうなったって構わない。後先のことなんて考える余裕すらなかった。

「幸奈、俺は一度忠告をした。
だから、俺はもう知らないからな?」

優しく耳を舐められた。ただそれだけのことなのに、一気に身体中が熱を帯び始めた。

「ん……、」

耳を舐められただけなのに、思わず声が漏れてしまった。

「その声は反則。止まらなくなるから」

反則と言われても、自分で止めることはできない。
愁が触れるだけで、身体が勝手に反応してしまう。

「だって、我慢できないもん……」

「それって男からしたらさ、誘っているようにしか聞こえないんだけど」

私は自分の気持ちに嘘はつけなかった。無意識に誘っていたのかもしれない。
早く愁と一つになりたくて、愁にその気になってほしかったんだと思う。

「そんなつもりはなかったけど、私、嘘はつけないから」

よく行為中、女性は演技をすると聞いたことがあるが、私は今まで一度も演技をしたことがない。
それはきっと愁が慣れており、上手くリードしてくれているお陰だ。
だからこそ、私は愁に嘘をつきたくはない。せめて行為中だけは、素直でいたい。
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