私が一番近かったのに…
「そうか。とにかく頑張れよ」

副店長はそう言い残して、仕事に戻ってしまった。
私の気持ちがバレていた。もしかしたら、ずっと顔に出ていたのかもしれない。
バレないように上手く取り繕っても、意味がないということを知った。
私は嘘がつけない性格。どこまでも正直者なのであろう。
私のことなんて興味がないものだとばかり思っていたので、見ている人は見ているんだということを改めて知り、まだ頑張れそうな気がした。
この時の私は、少しだけ前向きになれた。その前向きさは、仕事にも活かされ、集中力が更に高まった。


           ◇


「すみませんでした…」

残り時間があと一時間といったところで、ようやく愁が戻ってきた。
やっと彼女が納得して帰ってくれたみたいだ。かなり粘ったみたいなので、相当体力と気力を失ったに違いない。

「大丈夫だ。岩城の分は大平が頑張ってくれた。大平に感謝しておけ」

私の場合、頑張ったとはいえども、周りの手助けがあってやっと…といった感じだ。

「ありがとう、幸奈。助かった…」

働いている時よりも疲れ切った顔をしていた。相当、説得に時間がかかったのであろう。

「大丈夫だよ。気にしないで」

迷惑をかけた分、少しでも頑張りたいと思っていた。
これで、少しは休んだ分を取り返せたと思う。それよりも今は、愁のことが心配だ。

「そう言ってくれて助かる。この件については後日、ちゃんとお礼をする」
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