私が一番近かったのに…
私から手を握った。愁は優しい人だから、彼女を傷つけてしまったことに、きっと胸を痛めているかもしれない。そう思ったら、愁のことを慰めたいと思い、自ら手を差し伸べていた。

「私達は親友なんでしょ?なら、親友として話を聞かせてほしい。
今まで聞いてこなかった私も悪いし、それに、」

親友なんて言葉を使いたくはなかった。
今がチャンスなはずなのに、弱みにつけ込むなんてことはできなかった。

「そんなに傷ついた顔してるのに、放っておけないよ…」

彼女のためを思い、わざと自分が悪者になったのであろう。
それでも言葉は選ぶべきだった。愁なりの優しさのはずが、言われた本人より、傷ついてしまっているのだから。

「ごめんな。迷惑かけて。あと、心配してくれてありがとう。
幸奈ん家に着いたら、ちゃんと全部話す」

もちろん、答えは…。

「迷惑なんて思ってないよ。早くお家に帰ろっか。いっぱい話を聞くからさ」

手を強く引いた。早く家に帰って、話を聞きたい。
一体、愁と彼女の間に何が起きたのか、気になる。

「幸奈、ありがとな。俺、お前がいなかったら、ダメだったかもしれない…」

愁の中にある小さな鬱憤が、知らないうちに大きな塊となり、気がついたら、ドス黒いモノへと変化していた。
たまたま傍にいた私が、今の愁にとっては救いになっているんだ。私以外、味方がいないからかもしれない。
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