私が一番近かったのに…
「それにまだ諦めるのは早いと思う。まずは、今まであったことを話してみてよ」

私はズルいのかもしれない。さり気なく、彼女より自分の方が良い女だってアピールしてる。
こんな小さなアピールをしたって、今更もう遅いというのに。

「そうだな。諦めるにはまだ早いよな。まずは俺が今まで思っていた、胸の内を聞いてくれ」

これからどんな話を聞かされても決して動じない。ちゃんと愁を支えないと…。

「うん。あとでたくさん話を聞かせてね」


首を縦に頷くだけだった。それからの道中は特に会話はなかった…。

           ◇


「何から話したらいいのか分からないが、とりあえず、俺の話を聞いてくれ」

愁を部屋に上げ、腰を落とした途端、すぐに愁は話すモードへと切り替わった。
どうやら、話す覚悟を決めたみたいだ。私は慌てて、話を聞く姿勢を整えた。

「うん。大丈夫。ちゃんと話を聞くから。でも、その前にお茶の準備をさせて」

慌てて立ち上がり、冷蔵庫の中にある麦茶をコップに入れ、差し出した。
急拵えでは、こんなものしか用意できなかった。

「お待たせ。ごめんね、冷蔵庫の中にある麦茶を、ただコップに淹れただけですが」

「大丈夫だ。充分すぎる。頂きます…」

まずは一杯、麦茶を飲み干した。相当緊張しているみたいだ。
それもそうか。恋人とのことを、他人に話すのだから。

「えっと…、彼女とは幸奈も知っている通り、客で来ていていて、そこから仲良くなって、告白されて。それで付き合うことになったから、線引きが曖昧だったんだ」

愁の言う線引きとは、お店に遊びに来ることであろう。
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