私が一番近かったのに…
「俺もそんなもんだ。男だから余計にな。そんなことはどうでもいいんだ。俺は幸奈が作る料理がどんなものなのか、見てみたいんだ」

やっと諦めてくれたかと思いきや、まだ愁は諦めてはいなかった。
まさか手料理を作って欲しい理由が、私の手料理が見てみたいという理由なんて思わなかった。
そんなの、絶対に嫌に決まってる。だって料理が下手だから。そんな下手な料理なんか見せたくない。

「料理だけじゃなくて、もっと色々、幸奈のことを知りたいんだ」

それは私だって同じだ。もっと色んな愁を見たい。
それに、愁の本当の気持ちも知りたい。私や彼女のことをどう想っているのか。

「前にも話したとは思うが、俺は独占欲が強いんだ。俺以外にお前の初めてを渡したくない。お前の初めては全部、俺であってほしいんだ」

つまり、愁は手料理自体はどうでもよくて。私の初めてを欲しいだけみたいだ。

「ごめん。料理だけは…」

どんなに愁が欲しがっても、それだけはまだあげられない。他ならいくらでもあげられるから、それで我慢してほしい。

「急な頼みだからな。そりゃ無理だよな」

ようやく諦めてくれたみたいだ。でも、差し入れは持っていこうと思う。手料理ができない代わりに、ちょっとお高い美味しいものを。
これがもし、手料理ではなく、あのお店のあれを買ってきてとかだったら、まだ楽だったのにな…。

「とりあえず、挑戦してみてはくれないか?全部冷凍食品でも、俺は全然構わない。幸奈の好きなようにやってほしい」
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