私が一番近かったのに…
タオルを巻き、浴室の扉を開け、中へと入る。
シャワーを浴びるために、タオルを浴槽の淵に掛け、軽く身体を洗い流した。
先に身体を洗おうか迷ったが、まずは湯船に浸かることにした。

「隣、失礼します…」

お湯は先に入った愁が、沸かしてくれていたみたいだ。
本当に私達の行動には、全く計画性がない。本当はちゃんと沸かしてからお湯に入ってほしかったけど。たまにはこういうのもアリかもしれない。
自分達のペースで、思うがままに行動する。そんな思い切った大胆な行動も、私には必要なのかもしれないと思った。

「愁は身体、洗ったの?」

「まだ。一緒に洗おうと思って、幸奈のことを待ってた」

寒い中、待っててくれたの?お湯もちゃんと湧いていなかったというのに。
風邪を引いたら私の責任だよね?どうして家に上げた段階で、沸かしておかなかったのだろうか。もっと考えて、行動すればよかったと反省した。

「そうだったの?身体冷えてない?大丈夫?」

愁の身体が心配だ。もし風邪でも引いて、バイトや学校を休むことにでもなったら、申し訳ない。

「気にすんな。大丈夫だ。幸奈ん家の風呂って、結構沸くの早いから。
軽くシャワー浴びている間に、充分温まった」

確かに家のお風呂は、すぐにお湯が沸く。
それでもさすがに真冬だ。お湯が沸くまでの間、寒かったに決まってる。

「寒かったのなら、我慢しないでよかったんだよ。
…って今更止めても遅いけどね。勢いで入ろうとした愁を、止めなかった私も良くなかったと思う。今度からはお互いに気をつけよう」

好きな人だから、迷惑をかけたくない。この気持ちを分かってほしい。どうか伝わっていますように…。

「そうだな。気をつけるよ。さてと、今はこの状況を楽しもう」

分かってもらえたかは分からない。
それでも、愁の心に少しでも届いたのなら、今はそれだけで充分だ。

「そうだね。そろそろ身体洗おっか」

「そうだな。洗おっか」
< 232 / 346 >

この作品をシェア

pagetop