私が一番近かったのに…
愁が来るようになり、一個しかなかったバスチェアが、二個に増えた。
一緒にお風呂に入る機会が増えたため、いつ来てもいいように買い揃えた。
バスチェアに限らず、歯ブラシや食器類も。愁のことだけを考えて、常に行動している。
それなのに、もっと俺のことを考えてほしい…って。これ以上考えたら、もっと好きになってしまう。
ただの肌と肌の触れ合いでも、少し意識してしまう。
誰だって、好きな人に触れられてしまえば、そうなるに決まってる。

「ほら出るぞ。…こっちに来い」

手を差し出され、私はその手に自分の手を重ねた。
私は愁に引っ張られ、湯船から立ち上がらされた。

「うん。そっちに行く…」

浴槽から上がり、バスチェアに腰掛けた。
私の後ろに愁が座り、シャワーのお湯をかけていく。

「ありがとう。私も愁にシャワーをかけた方がいい?」

「今はまだ大丈夫だ。先に幸奈を洗うつもりだから、その後にやってくれないか?」

後ろを振り返ると、顔を赤くして照れていた。
今日の愁は、どこかいつもより甘えん坊さんのように思えた。
私の身体を見て、少しは意識してくれているのだと思うと、嬉しかった。
下まで確認することはできなかったが、きっとたくさん我慢してくれているのだと思うと、敢えて触れないでおくことにした。
私がいつも通りに触れてしまえば、彼を煽ることになってしまう。
せっかく我慢してくれているのだから、今は私が我慢しないと…。
再び前を向き、背中を愁に預けた。ここは愁に洗ってもらおう。ちょっぴり恥ずかしいので、見て欲しくない気持ちもあるけど。
この際、ここまできたら、何をしたって変わらないと、開き直ることにした。
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