私が一番近かったのに…
今日一日を思い返すと、色々なことがあった。主に愁の身に起きた出来事ではあったが…。
ただでさえ、働いて疲れているというのに、突然、彼女がバイト先にお仕掛けてきては、その上、仲間に迷惑をかけてしまい、謝罪回りをしたので、いつも以上に疲れたであろう。
今日はゆっくり寝て、少しでも疲れを取って休んでほしい。
彼の寝顔を眺めながら、頭を優しく撫でる。柔らかくてサラサラな髪。しかも睫毛が長くて羨ましいくらいだ。
この人の彼女になれたら、どれだけ幸せであろうか。

私が彼女に勝てるなんて思っていないが、今はもう別れてほしいと願っていない。
少しずつ自分の気持ちに余裕が持てるようになったから、そう思えるようになったのかもしれない。
だからこそ、自分の気持ちに踏ん切りをつける勇気が持てた。

でもまずは明日、愁のためにお弁当を作らなければならない。ちゃんと作れるかどうか不安ではあるが…。
失敗したらこの際、冷凍食品を詰めるか、バイト先で何か買って、少しでも貢献することにしよう。
あれこれやっていたら、あっという間に遅くなってしまった。私もそろそろ寝なくてはならない時間だ。

「おやすみなさい、愁」

私もそのまま眠りについた。相当疲れていたのであろう。朝までぐっすりと、愁の腕の中で眠っていた。


           ◇


「幸奈、おはよう」

愁の声とほのかに香る良い匂いで、目が覚めた。

「おはよう。あれ?もしかして、朝ご飯作ってくれたの?」

「昨日、幸奈には迷惑かけちまったから、そのお礼にと思って。
あと弁当も作ってもらうから、せめて朝ご飯は…と思ってたな」

まさか朝、目を覚ましたら、愁が朝食を用意してくれているなんて、思いもしなかった。

「ありがとう、早速、顔洗って来るね」

寝巻きのまま、慌ててベッドから起き上がり、洗面所へと向かう。
寝起きなので、髪もボサボサな上に、顔も少しばかり汚い。
しっかり顔を洗い、歯を磨く。櫛で髪を綺麗に梳かし、ある程度準備が整ったところで、リビングへと向かった。
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