私が一番近かったのに…
「そんなことは分かってる。中山は俺を思ってやったことだから、責めたりなんかしない」

きっと愁は、自分の気持ちを弄ばれたように感じたのかもしれない。
気持ちを知った途端、態度が一転したら、誰でも不信感が強まるに決まってる。
私は一体、何をやっているのだろうか。自分で自分の首を絞めているだけに過ぎない。
情けない話だ。これ以上の望みなど、ありはしないのだから。

「ねぇ、どうして、もっと早く言ってくれなかったの?」

私には愁の気持ちを理解することができなかった。どうして、愁の本当の気持ちを告げてもらえなかったのか…。
こんなことになるくらいなら、もっと早く素直に自分の気持ちを伝えておけばよかった。
もし素直になっていたら、今頃隣にいるのはきっと、私のはずだったのに…。

「ごめん……」

愁からの返事はたった一言だった。他にもっと言うべき言葉はないのだろうか。
どんな愁でも受け入れたいと思っていたのに、段々と感情の起伏が激しくなっていき、ついに噴火してしまった…。

「ごめんじゃ分からないよ。私はもう無理だよ…」

私は愁の背中に抱きついた。

「愁、お願い。私を抱いて。私を愁のセフレにして…」

断腸の思いだった。もう友達のままなんて嫌だ。
これから先、どんどん私は愁の目に映らなくなっていくのだと思うと、そんなの怖くて耐えられない。
ならいっそのこと、あなたの手で私を壊してほしいと思った。

「ダメだ。もっと自分を大切にしろ。俺はお前の彼氏にはなれない。
だから俺はお前の初めてをもらえない。これ以上、俺に期待しないでくれ」

ここまできっぱりと断言されてしまえば、私が諦めると思ったのかもしれない。
でも、簡単に引き下がれない。手段を選ばずに、あなたを手に入れると決めたから。

「嫌だ。愁、私を抱いて……」

強く抱きしめた。気持ちを力に込めてみた。どうか私の想いが伝わりますように……。

「私を彼女よりも近くに置いてほしい。お願い…」

バカな女だと思われてもいい。早く私を壊してほしい。
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