私が一番近かったのに…
「幸奈はそれでいいのか…?」

それでいいのかさえ、自分でもよく分からない。
この先、傷つくことの方が多いかもしれない。
それでも私は、首を縦に頷くことしかできなかった。
もっと早くこんなふうに甘えていればよかったのかもしれない。今更もう遅いが…。

「俺と幸奈は恋人同士ではない。その意味が分かるよな?」

「それは重々承知だよ。あくまで私達は友達。絶対にそのボーダーラインから、はみ出さないことを約束する」

愁が彼女のことをどれほど大切に想っているのか、痛いほど伝わってきた。
一度は拒絶されたが、そんな愁が私のために応えようとしてくれている。
いつかお互いに傷ついてしまう時がくるかもしれない。
それでも愁は、私と一緒に危ない橋を渡ろうとしてくれている。
本当に愁は優しすぎる。私はあなたの優しさにつけ込んだことに胸が痛んだ。

「分かった。俺の好きなように抱かせてもらう」

強引に腕を掴まれ、そのまま腕を引っ張られた。
お互いに感情をどこへぶつけたらいいのか、よく分からなかった。
勢い余って、この関係を選んでしまった。後先のことなんて何も考えずに…。
気づけば、自宅に着いていた。いつもならここで解散…。
でも今日は違う。私達は今からセックスをする。

「男が女にせがまれて、据え膳食わぬ奴はいない。煽ったのはお前だ。お前が責任を取れ」

掴んだ腕を引っ張られながら、私の部屋の前まで連れて来られた。
愁は既に雄の目をしていた。初めて愁が怖いと感じた。

「幸奈、早く部屋の扉を開けろ」

私を好きだった頃とは、全く対応が違う。これが彼女とセフレの違いだ。現実を突きつけられ、胸がチクリと痛んだ。
言われるがままに、私は愁の指示に従った。自らこの関係を望んだのだから、愁の言いなりになるのは当然だ。
鞄の中から慌てて鍵を探し出し、玄関の扉を開けた。
扉が開いた瞬間、更に腕を強く引っ張られ、中に引きずり込まれた。
扉が閉じた瞬間、逃げられないように、扉の方に追い込まれた。
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