私が一番近かったのに…
「それじゃ、俺に安心させるものを頂戴?」

次の瞬間、キスされた。突然のことで頭が真っ白になった。

「ずっと俺の傍に居てほしい」

いつも強めに出てくる愁の態度が、今日はどこか弱気に感じた。
もしかしたら、何か勘づいたのかもしれない。

「私のことはもう大丈夫。それよりも愁の方こそ大丈夫?彼女とどうして喧嘩になったの?
あまり無理はしないでね。私で良かったら、いつでも頼ってほしい」

直球で聞いてみた。私には関係ないことだと分かった上で、どんなことがあったのか知りたかった。
彼女でもないのに、些細なことであっても知りたいと思うのは、私の我儘に過ぎない。
それでも私は知りたい。愁のことなら全部…。

「幸奈は優しいな。喧嘩は些細なことだ。今はアイツのことなんか考えたくない。
だって、幸奈と居るから。それじゃダメか?」

教えてはもらえなかった。どうして?私には関係のないことだから?
嫌だよ。彼女と二人だけの秘密にしないでよ。

「ダメ。私にもっと頼ってよ。今、一緒にいるのは私だよ?」

キスをした時に離れてしまった腕をもう一度掴み、力を込めた。さっきよりも強めに。
あまりにもぎゅっと腕をきつく絡めてしまったため、胸が思いっきり当たってしまい、わざと押し当てているような形になってしまった。

「ちゃんと俺もお前のことを頼りにしてるよ。だって俺は今日、お前ん家に泊めさせてもらえるんだから、もう充分甘えさせてもらってる」

それは違う。私は教えてほしかっただけだ。彼女と喧嘩した原因を…。
言葉がないと不安になる。私を頼ってくれるのは嬉しいが、せめて私の前では本音を話してほしい。
嘘をつかないでほしいだけなのに、愁には分かってもらえないみたいだ。

「愁はそれでいいの?心の負担は軽くなるの?」

いつも穏やかな愁が、こんなにイラついているのは滅多にないことだ。初めて愁のことが怖いとさえ感じた。
どうして怖いのに、私はこんなにも立ち向かうことができるのだろうか。
結局のところ、私は心配を通り越して、愁と彼女の間に何があったのか、知りたいだけなのかもしれない。
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