三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
おいしいパスタは憂鬱な話題を吹き飛ばすには充分だった。時間の壁などあっという間に崩れ去り、お互いのこれまでを語り合い、笑いあった。
「尚くんは今なにしてるの?」
ラザニアの最後の一口を食べて、沙耶は聞いた。
「新エネルギー開発の会社で働いてるよ。親父の会社とはまったく違うところ」
新橋にある会社で働いていて、住居もその近くで一人暮らしをしているという。
「跡を継いだりとか、あるんじゃないの?」
「今は株式会社で公開もされてるからね。血筋では社長になれないよ。俺は野心もないし、今の仕事が好きだから」
「どんな仕事なの?」
「水素発電の関連。詳しくは説明してもつまらないと思うよ。」
「うん……難しそう」
「それより、沙耶のことが聞きたい」
ぎくっとした。聞かれたくない話題だった。
だが、いつまでも避けて通れる話でもない。隠すような話でもない。
食事の皿が下げられ、プチデザートのティラミスが運ばれて来た。
沙耶はどうやって話そうか、言葉を選びながらスプーンを手に取った。が、何も出てこない。
「同窓会で、猫の何かの資格をとってペットショップで働いてるって聞いたよ。猫が好きだったもんね」
答えにつまった沙耶を気遣ったように尚仁が言う。
沙耶は意を決して笑顔を向けた。満面の、とはいかないのは許してほしかった。
「でも、もう辞めたの」
「なんで……って聞いてもいいのかな」
「アレルギーが出ちゃって。店にいるだけでもうダメで」
「そっか、それはつらいね」
いたわる彼の声がいたたまれなくて、ことさらに明るく続ける。
「事務とか倉庫とか、そういうところへの転属の話もあったんだけど、すぐには異動できないからしばらく店舗でがんばってくれって言われて。でもアレルギー反応がつらくてそれまで待てずにやめちゃった」
全国に展開しているペットショップだったから、地元で採用されたあとに数年働き、神奈川に転勤になったのだった。
「無職って言いづらくて、同窓会は欠席したの」
「そうだったんだね。ごめん」
「謝ることじゃないよ。このままだと地元に戻らないといけないけど、とりあえずはこっちで仕事を探しているところなの」
「そんなときに呼び出してごめん」
「ううん、私も会いたかったから」
そう言うと、尚仁は微笑を返してくれた。
「お願いがあったんだけど、その状態だと無理かな」
「尚くんは今なにしてるの?」
ラザニアの最後の一口を食べて、沙耶は聞いた。
「新エネルギー開発の会社で働いてるよ。親父の会社とはまったく違うところ」
新橋にある会社で働いていて、住居もその近くで一人暮らしをしているという。
「跡を継いだりとか、あるんじゃないの?」
「今は株式会社で公開もされてるからね。血筋では社長になれないよ。俺は野心もないし、今の仕事が好きだから」
「どんな仕事なの?」
「水素発電の関連。詳しくは説明してもつまらないと思うよ。」
「うん……難しそう」
「それより、沙耶のことが聞きたい」
ぎくっとした。聞かれたくない話題だった。
だが、いつまでも避けて通れる話でもない。隠すような話でもない。
食事の皿が下げられ、プチデザートのティラミスが運ばれて来た。
沙耶はどうやって話そうか、言葉を選びながらスプーンを手に取った。が、何も出てこない。
「同窓会で、猫の何かの資格をとってペットショップで働いてるって聞いたよ。猫が好きだったもんね」
答えにつまった沙耶を気遣ったように尚仁が言う。
沙耶は意を決して笑顔を向けた。満面の、とはいかないのは許してほしかった。
「でも、もう辞めたの」
「なんで……って聞いてもいいのかな」
「アレルギーが出ちゃって。店にいるだけでもうダメで」
「そっか、それはつらいね」
いたわる彼の声がいたたまれなくて、ことさらに明るく続ける。
「事務とか倉庫とか、そういうところへの転属の話もあったんだけど、すぐには異動できないからしばらく店舗でがんばってくれって言われて。でもアレルギー反応がつらくてそれまで待てずにやめちゃった」
全国に展開しているペットショップだったから、地元で採用されたあとに数年働き、神奈川に転勤になったのだった。
「無職って言いづらくて、同窓会は欠席したの」
「そうだったんだね。ごめん」
「謝ることじゃないよ。このままだと地元に戻らないといけないけど、とりあえずはこっちで仕事を探しているところなの」
「そんなときに呼び出してごめん」
「ううん、私も会いたかったから」
そう言うと、尚仁は微笑を返してくれた。
「お願いがあったんだけど、その状態だと無理かな」