三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
「お願い? なに?」
「最近、猫を飼い始めて。猫用品を一緒に見てもらえたらな、と思ってたんだ」
 そう言われて、うずうずする。猫の柔らかな毛の手触り、温かい体温。小さな頭にピンと立った耳。

「スフィンクスっていう品種の猫なんだけど。あれならアレルギーも大丈夫っていう人もいるけど、どうなのかな」
「個人差があるから、絶対大丈夫ってことはないと思う。毛のない猫のスフィンクスだよね?」
「そう、その猫」
「見たい」
 沙耶は目を輝かせた。ネットで画像を見ることはあるが、実物を見たことはなかった。

「うちに見に来る? ここから電車で一本だよ」
「お邪魔してもいいの?」
「君が大丈夫なら」

 沙耶はどきどきしながらティラミスをスプーンですくって口に入れた。
 一人暮らしの男性の部屋に行くなんて。彼だって男なのだから、と頭をよぎる。
 だけど、尚仁は自分のことは友達にしか思ってないだろうし、変なことをする人でもない。何よりスフィンクスの実物を見たい。

「映画の宇宙人のモデルにもなったんだよね、あの猫」
 時間を稼ぐように、沙耶は言った。
「そうだね。その映画を見たことはないけど」
「普通の猫とは違う?」
「違うけど、猫は猫だよ」
 答えてから、尚仁は苦笑する。

「やっぱり見てもらったほうがいい気がする。ぜひ来て」
「ありがとう」
 沙耶はどきどきしながらティラミスをまた口にした。
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