三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
バッグを持って部屋を出る。
なんとも言えない感情で全身が震えていた。
ビルを出ると、そのまま真っすぐ尚仁の部屋へと向かった。
すっかりなついたクレオパトラは、沙耶を見るなり、にゃーと甘えるように鳴きながら寄って来た。その頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めてすり寄ってくる。
彼女を抱きかかえてソファに座り、震える手でスマホをうつ。
「話したいことがあります」
それだけをメッセ―ジで尚仁に送った。
仕事の時間だろうに、すぐにスマホが鳴った。
「どうしたの? 何かあった?」
電話に出ると、心配そうな尚仁の声が耳に届く。
「尚くんて、本当に社長なの?」
「……そうだよ。ごめん。なんだか言いづらくて」
隠すようなことでもないと思うのに、どうして彼は言わなかったのだろう。立場で沙耶が態度を変えると思われてしまったのだろうか。同窓会で会った同級生たちのように。
「今日、面接であの女社長に会ったの」
「……どうだった?」
「尚くんはどうしてあの会社を受けない方が良いと言ったの?」
「……君に合わないと思ったから」
そんな漠然とした理由で止めるものだろうか。そうは思えない。あの女社長と彼は以前から面識が会ったのだから。なにか彼女をあの会社に行かせたくない理由があるに違いない。——たとえば不倫とか。
「本当のことを言って」
あの女が言ったことは嘘だと言って。
沙耶はどきどきしながらスマホに耳を傾ける。
「本当と言われても」
尚仁の声には戸惑いがあった。
あの人とつきあってるの?
そう聞きたかったけど、口にする勇気はなかった。肯定されたときのショックが大きすぎる。
沙耶は大きく深呼吸してから、別のことを尋ねる。
「女性の気を引くために猫を飼ったって、本当なの?」
「そんなこと……」
尚仁が言葉につまった。
それはつまり肯定だ。
なんとも言えない感情で全身が震えていた。
ビルを出ると、そのまま真っすぐ尚仁の部屋へと向かった。
すっかりなついたクレオパトラは、沙耶を見るなり、にゃーと甘えるように鳴きながら寄って来た。その頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めてすり寄ってくる。
彼女を抱きかかえてソファに座り、震える手でスマホをうつ。
「話したいことがあります」
それだけをメッセ―ジで尚仁に送った。
仕事の時間だろうに、すぐにスマホが鳴った。
「どうしたの? 何かあった?」
電話に出ると、心配そうな尚仁の声が耳に届く。
「尚くんて、本当に社長なの?」
「……そうだよ。ごめん。なんだか言いづらくて」
隠すようなことでもないと思うのに、どうして彼は言わなかったのだろう。立場で沙耶が態度を変えると思われてしまったのだろうか。同窓会で会った同級生たちのように。
「今日、面接であの女社長に会ったの」
「……どうだった?」
「尚くんはどうしてあの会社を受けない方が良いと言ったの?」
「……君に合わないと思ったから」
そんな漠然とした理由で止めるものだろうか。そうは思えない。あの女社長と彼は以前から面識が会ったのだから。なにか彼女をあの会社に行かせたくない理由があるに違いない。——たとえば不倫とか。
「本当のことを言って」
あの女が言ったことは嘘だと言って。
沙耶はどきどきしながらスマホに耳を傾ける。
「本当と言われても」
尚仁の声には戸惑いがあった。
あの人とつきあってるの?
そう聞きたかったけど、口にする勇気はなかった。肯定されたときのショックが大きすぎる。
沙耶は大きく深呼吸してから、別のことを尋ねる。
「女性の気を引くために猫を飼ったって、本当なの?」
「そんなこと……」
尚仁が言葉につまった。
それはつまり肯定だ。