三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
 片づけていく最中に、どんどん頭が冷静さをとりもどす。

 彼は本当に女の気をひくために猫を飼ったのだろうか。
 彼の猫への愛を語る言葉は、いつも温かかった。
 猫グッズを一緒に選んでいるときも、とても楽しそうだった。
 猫のために毎週お風呂に入れているというし、実際クレオパトラはいつも清潔に保たれていた。

 連れてきてしまったけれど、この選択は本当に正しかったのか。
 社長であることを隠されていたし、彼が女の気をひくために猫を飼ったことは確認した。だが、だからといってクレオパトラへの愛情がなかった証明にはならない。
 クレオパトラを見ると、彼女はハウスに移動してじっと沙耶を見つめていた。



 雪絵から電話がかかってきたのはその夜のことだった。
「久しぶりー。この前、どうだった?」
 雪絵の声は明るかった。

「この前って」
「綾野くんから電話あったでしょ?」
「あったけど……」
「久しぶりに会ったりしたんじゃないの?」
「うん……」

「沙耶と連絡がとれなくなった、なにかあったんじゃないか、って綾野くんから電話が来たんだけど」
 沙耶は少し迷ってから、話し始めた。
 仕事をやめたこと。再会してからペットシッターを頼まれたこと。女社長に言われたことなど。

「一番許せなかったのは、女の気をひくために猫を飼い始めたってこと!」
 鼻息荒く沙耶がそう言うと、雪絵は異議を唱えた。
「綾野くんって、そういう人じゃなくない?」
「だけど否定しなかったのよ」

「とりあえず、あんたのやったこと犯罪だからね?」
「は!?」
 沙耶は驚いて声をあげた。
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