天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「……そろそろ、時間切れか」
そう呟き、彼女をキスから解放する。
紗弓はまだ熱に浮かされたような目をしていたが、今一度腕時計を確認し、キュッと唇を引き締める。
「今のキスの理由も、愛してるだなんて急に言ってくれた意味も……時間のある時にちゃんと、説明してくれますよね?」
「ああ。どんなに言葉を尽くしても伝え足りないと思うが、必ず」
彼女の目の前に、約束を交わすための小指を差し出す。紗弓もか細い小指をそこに絡め、頷いてくれた。
「わかりました。本当は今すぐ聞きたいですが、我慢して行ってきます」
「気をつけてな。防犯ブザーをちゃんと持って……そうだ。最後にひとつだけ」
フライトで家を空ける前に、これだけは伝えておかなくては。
「青桐とノアが接触してるらしい。目的は不明だが、警戒しておくに越したことはないだろう。俺がいない間は実家に帰った方がいいかもしれない」
「昇さんとノアさんが?」
紗弓が驚いて瞠目する。しかし、直後に腕時計を一瞥した彼女は「もうこんな時間」と呟き、軽く手を上げる。
「すみません、もう行きます。明日からのフライトもどうかお気をつけて」
「ああ、ありがとう。行ってらっしゃい」
玄関の扉が閉まり、紗弓の軽やかな足音が遠くなっていく。俺はまだ軽く残っているアルコールを抜きたくて、コーヒーでも淹れようとキッチンへ向かった。