天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ああ。ビジュアルアプローチできない場合は、ILSアプローチになるだろう。経路を変えて南下しなければならないが、管制の指示に従えばいい」
空港やその他の目標物を目視できない場合、滑走路から発せられる電波の誘導によって進入する方法を取る場合がある。その無線装置をILSと呼ぶのだ。
福岡空港は、滑走路一本当たりの発着数が多い日本有数の多忙な空港。
他機と離着陸のタイミングが重なり空港上空が渋滞するなんてこともあるので、着陸時のアプローチがスムーズにできるよう、ブリーフィングも自然と念入りになる。
「ぼ、僕、今まで晴れの日しか福岡空港にアプローチした経験ないんですよね……」
「だったらちょうどいい。往路はきみがやれ」
「えっ」
副操縦士が頼りない声を出す。下がった眉も完全に〝不安です〟と訴えており、少々呆れそうになる。
そんな逃げ腰では、パイロットとして成長できないぞ。
ふと、俺は青桐のことを思い出した。彼もまたこの副操縦士と同じで、天候や機材の状態に少しでも危険な要素があるとき、機長から操縦を任されることを嫌っていた。