天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 副操縦士だからこそ、経験を積ませる意味であえてやらせてくれているというのに……機長の前で慌てたりミスをしたりする姿を晒したくなかったようだ。

 本当に、昔からプライドだけは人一倍高い奴だった。

「あのっ、露木キャプテン」
「ん?」
「僕、やります。やらせてください」

 どうやら、副操縦士は覚悟を決めたようである。強い眼差しで俺を見つめる姿は、さっきと別人だ。

「ああ、頼むよ。だけどもう少し肩の力を抜け。隣には俺がいるんだ。ひとりで完璧に飛ばそうなんて思わなくていい」
「はいっ。よろしくお願いします……!」
「シミュレーター訓練では、悪天候の難しい着陸を何度も経験しただろう? 自信を持て」

 ポンと肩を叩くと、副操縦士の表情がふっと緩む。

 フライトに臨むに当たってある程度の緊張感は大事だが、同じくらいリラックスするのも大事。うまく力を抜いてやれただろうか。

 敬愛する香椎さんや真路さんに比べたら、後輩育成に関してはまだまだ初心者。

 いつかは彼らのようなグレートキャプテンになれたらと願いつつ、オフィスを出て担当便のコックピットへと向かった。

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