天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 そんな馬鹿なことを言うのは青桐だけかと思いきや、そうではなかったらしい。

 俺も俺で、そこまで同僚と親しくする方ではないから、噂話があることすら知らなかった。

 知ったところで何かしたわけでもないと思うが……。

「その上、成沢さんが入ってからは彼女と不倫してるなんて噂もあって……僕も、少しだけ色眼鏡で見ていた部分があったんです。でも、今日フライトをご一緒して、噂は噂でしかないとわかりました。露木さんは、実力で評価されてる方だって」

 副操縦士は目をキラキラさせて俺を見ているが、俺の胸中はそれどころではなかった。

 香椎さんに贔屓されているという件はともかく、ノアと不倫……?

 そんな噂がどうして立つというのだろう。フライトスクール時代の仲間だという以外、日本で彼女とふたりきりで会うなど、疑わしい行動をとった覚えはない。

「そのくだらない噂は、誰に聞いたんだ?」

 思わず声が尖ってしまう。副操縦士はビクッと肩を竦めた。

「ええと……ハッキリとではないんですけど、同期の副操縦士が、成沢さんご本人からその、不倫を匂わせるような発言を聞いたと」
「そうか。貴重な情報ありがとう」

 このあともう一便、大阪へのフライトはノアと一緒だ。仕事中はともかく、現地へ着いてからでも折を見て話を聞く必要があるだろう。

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