天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
今日、実家に帰ってきてよかった。先輩方からのエールはとても励みになるし、もらったアドバイスはこれからの夫婦生活に役立ちそうだ。
「ありがとうございます。私、きっと露木さんと幸せになります」
満面の笑みで宣言すると、母と真路さん、杏里さんがぱちぱちと拍手をくれた。
しかし、父だけは腕組みをして目を閉じ黙り込んでいる。眉間の皺は、相当な深さだ。
「お母さん、お父さんのあの顔はどういう意味?」
「あれはねぇ……」
母が神妙に父の顔を覗き込む。夫婦生活を長く続けたからこそわかる、母だけの読心術。
いったい、父はなにを考えているというのか。
「紗弓がお嫁に行っちゃって、お父さん寂しいっ! ……の顔ね」
「ふむ、さすがだな」
ジッと閉じていた目を開け、父が感心したように言う。
くだらないやり取りなのにおかしくて、真路さんや杏里さんと一緒に私も噴き出してしまった。
「鬼の香椎キャプテンが夫婦漫才してる~」
「今の、録画しておくんだったな……。そうすれば、香椎さんを怖がる新人副操縦士たちの緊張を解いてやれたのに」
「やめてくれ。私の築き上げてきた鬼のイメージが台無しだ」
食卓は再び笑いに包まれ、和やかな時間が過ぎていく。