天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 本当は昇さんについても話を聞きたかったけれど、楽しい空気に水を差すのが嫌で、結局口にはしなかった。

 それに、私が今頼るべきは夫の嵐さんだ。彼と向き合うのを躊躇っていたら、いつまでも前に進めない。昇さんのこともきちんと彼に相談して、怖いって、正直に言おう。


 昇さんのことを警戒し、嵐さんがステイ先から帰るまでの数日は実家から職場に通った。

 一度ラウンジに昇さんが現れたことを知っている父に『あれから大丈夫か?』と聞かれたので、時々変なメールはくるけれど、いずれ嵐さんと一緒に警察に相談するつもりだから心配しないでと伝えた。

 怖くなったら実家にいつでも帰れるし、家族は私の味方。

 昇さんからの嫌がらせになんて屈せず、いつも通りに仕事をこなしながら嵐さんとの結婚生活を続けることがきっと一番の抗議になる。そう信じて日々を過ごした。


 嵐さんが帰ってくる日になると、久しぶりに彼と暮らすマンションへ戻った。

 その日は早番勤務だったので私の方が帰宅が早く、料理をしながら彼を待つ。

 生活リズムがバラバラなので今まで手料理を振舞う機会がなかったが、国際線の乗務で疲れている彼を少しでも労いたくて、初めて夕食を用意することにしたのだ。

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