病弱な妹に全てを搾取されてきた令嬢はもう何も奪わせない
コレットが邸に火をつけようとしていると思ったのだろうか。
しかし、いくら憎くてもミリアクト邸を燃やすつもりはなかった。
そうしたい気持ちもあるが、そこまでしたら自分を好きでいられなくなってしまいそうだったからだ。

(早くっ、必要なものだけ持っていきましょう……!)

少しのお金と護身用のナイフをカバンに詰め込んで、ストールを肩にかけてからコレットは窓を開けた。
部屋には強い風が吹き込んでくる。
手紙を燃やしていた火も弱まって、今にも消えてしまいそうだ。

灰になった手紙を確認してから窓に足を掛けた時だった。
まるでコレットを引き止めるように部屋に吹き込む風に、今まで我慢していた涙が込み上げてくる。
鼻の奥がツンと熱くなり、コレットは涙が溢れ出てこないように瞼を閉じた。
コレットの部屋の扉は無理矢理こじ開けようとしているのか今にも壊れそうだ。

もう一人の自分がいつものように心の中で問いかけたような気がした。
『本当にこれでいいの?』
ここにいれば辛い目にあったとしても食べることに困ることはないし、温かい布団で眠ることができる。
いつかはリリアーヌの体調がよくなり、どこかに嫁げば解放されるかもしれない。
もしかしたらコレットが心の奥底で望んでいた両親の愛情が手に入るかもしれない。
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