かつて女の子だった人たちへ
絆が眠り、家事を終えた雪奈は先にベッドに向かった。
ベッドはシングルがふたつ。俊夫とは月に何度か性交渉はあるが、向こうが求めてきたときだけだ。こちらから誘うことはない。
いつも雪奈が先に寝室に向かっても「おやすみ」と見送るだけの俊夫が、今日はなぜか寝室についてきた。
「雪奈」
「あ、なに」
常夜灯に照らされた顔を見て、雪奈はどきりとした。夫のいわんとしていることがわかったからだ。
「ふたり目、考えないか?」
答え合わせのように俊夫が言う。背筋がぞわりとした。おそらく自分は今、硬い表情をしているだろう。
俊夫は真剣な表情で続ける。
「俺が浮ついてしまったのは、雪奈がしっかり者なのと、絆から手が離れてきたのが大きいと思うんだ」
それはどういう意味だろうか。自分がいなくても成立している家庭に、寂しさがあったと言いたいのだろうか。それは俊夫が多忙だから、雪奈がワンオペで頑張ってきただけの話なのだが。
「俺が愛してるのは雪奈だけ。それをわかってほしいし、愛の結晶がほしいと思ってる。俺も四十六だしさ、赤ん坊が産まれたらその子を成人させるまで頑張るぞって改めて思える。雪奈と絆と新しい命を守って行こうって頑張れる」
雪奈は言葉を失って、呆然と俊夫を見つめた。
(この人、自分のことばっかり。忘れちゃったのかしら、絆のときのこと)
雪奈がふたり目の妊活に前向きではなかったのは、絆の妊娠期間がなかなか過酷だったからだ。つわりがひどく入院し、退院したものの出産間際まで気持ち悪さがなくならず、ほぼ寝たきりで過ごした。出産は経腟分娩だったが、難産で二十時間以上かかった。あまりの衰弱ぶりに産後は実家で二ヶ月以上も世話になった。
「絆のとき、大変だったから……」
ベッドはシングルがふたつ。俊夫とは月に何度か性交渉はあるが、向こうが求めてきたときだけだ。こちらから誘うことはない。
いつも雪奈が先に寝室に向かっても「おやすみ」と見送るだけの俊夫が、今日はなぜか寝室についてきた。
「雪奈」
「あ、なに」
常夜灯に照らされた顔を見て、雪奈はどきりとした。夫のいわんとしていることがわかったからだ。
「ふたり目、考えないか?」
答え合わせのように俊夫が言う。背筋がぞわりとした。おそらく自分は今、硬い表情をしているだろう。
俊夫は真剣な表情で続ける。
「俺が浮ついてしまったのは、雪奈がしっかり者なのと、絆から手が離れてきたのが大きいと思うんだ」
それはどういう意味だろうか。自分がいなくても成立している家庭に、寂しさがあったと言いたいのだろうか。それは俊夫が多忙だから、雪奈がワンオペで頑張ってきただけの話なのだが。
「俺が愛してるのは雪奈だけ。それをわかってほしいし、愛の結晶がほしいと思ってる。俺も四十六だしさ、赤ん坊が産まれたらその子を成人させるまで頑張るぞって改めて思える。雪奈と絆と新しい命を守って行こうって頑張れる」
雪奈は言葉を失って、呆然と俊夫を見つめた。
(この人、自分のことばっかり。忘れちゃったのかしら、絆のときのこと)
雪奈がふたり目の妊活に前向きではなかったのは、絆の妊娠期間がなかなか過酷だったからだ。つわりがひどく入院し、退院したものの出産間際まで気持ち悪さがなくならず、ほぼ寝たきりで過ごした。出産は経腟分娩だったが、難産で二十時間以上かかった。あまりの衰弱ぶりに産後は実家で二ヶ月以上も世話になった。
「絆のとき、大変だったから……」