かつて女の子だった人たちへ
学生時代の友人とは疎遠で、急に連絡をしたら驚かれるに決まっている。ママ友こそ多くいるが、明るく楽しく育児を語り合う仲間にプライベートすぎる事情を話せない。

(弱みっぽくなっちゃうし)

絆の幼稚園や小学校のママ友たち。高級住宅地ということもあり、生活に余裕のある家庭が多い。お金がある人ほどひけらかさないもので、夫の仕事や資産については黙っている人たちがほとんどだが、なんとなくのランク付けは互いにしているし、心の中ではマウントの取り合いもあるだろう。雪奈も夫が会社を経営している程度しか言っていない。
そんな間柄で浮気やレスの話題を出せない。重たいだけでなく、家庭としての弱みを開示するようなものだ。
先日も小学校の仲良しママ友たちとランチ会があったが、学校行事や宿題の分量などの話で終わった。

『絆くん、塾はこれから?』

ママ友のひとりに聞かれ、雪奈は『うん、検討中』とごまかした。クラスメイトの多くは中学受験をする。小学校三年生か四年生には受験用の塾に入れるのが定番だが、雪奈の周りのママたちはもっぱらこの塾の情報戦に夢中だ。すでに有名な塾の低学年向けコースに入れている家庭もある。

雪奈は義母と俊夫の意向で、絆を小学校受験させた経験がある。
結果、落ちて公立校に通っているのだが、あのときの義母の落胆ぶりを見ると中学受験も今から気が重い。
ともかく、そんなママたちの前で、『夫がパパ活女子のパパをやっていた』などと口が裂けても言えないのだ。

(ああ、嫌……)

雪奈はダイニングテーブルで頭を抱えてうつむいた。ずっと頭が痛い。食欲もわかず、2キロ体重が落ちた。
俊夫はやり直そうと言ってくれている。大事なのは雪奈だと罪滅ぼしをしようとしてくれている。
その気持ちにこたえなければいけないのに。
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