かつて女の子だった人たちへ
「うまくいかない……」
するとインターホンが鳴った。誰だろう。宅配便などの予定はない。
モニターを見てぎくりとした。そこには義母の姿があったからだ。
「はあ、遠くて嫌になっちゃう。どうしてもっと近くに家を買ってくれなかったのかしら」
義母は汗をふきふき、入ってきた。アポなしだが、義母にはよくあることだ。何度かやんわり事前に連絡がほしいとお願いしたが、聞いてくれた試しはない。義母にとって、息子が買ったこの家も自分の家同然、いつでも好きなときにやってきていい場所なのだろう。
「お義母さん、遠いところありがとうございます。絆は十五時くらいには帰ってきますので」
今日は何の用だろう。絆がいればまだ間が持つが帰宅はあと二時間先だ。
義母は大きなおしりをどっかりとソファに落ち着け、背もたれに身体を預けた。
「絆ちゃんには会いたいけど、今日はちょっと雪奈さんの様子を見にきたのよ」
義母はふふんと笑って言う。彼女はいつだって人生の先輩として雪奈に物申したいことがたくさんある様子。しかし、雪奈には義母のすべてが押しつけがましく感じられてならない。
「俊夫がちょっと火遊びをしたみたいじゃない」
驚いた。夫は実の母に自分の不貞を告白したのだ。反省の印だろうか。
「ええと、……はい」
雪奈はなんと言ったものか悩んだが、義母が知っているなら隠し立てする必要もないと思った。もしかしたら、義母は雪奈の味方になろうとしてくれているのかもしれない。
雪奈はわずかな期待とともに、俊夫の不貞についてなるべくやんわり意見を述べようと思った。彼は謝ってくれ、再構築中だ、と。
しかし、口を開く前に義母が言った。
「それであなたが不貞腐れちゃったって? 俊夫が困ってるわよ」
雪奈は微妙な笑顔のまま凍り付いた。旗色が変ってきた。いや、元から雪奈に都合のいい空気ではなかったのだ。
するとインターホンが鳴った。誰だろう。宅配便などの予定はない。
モニターを見てぎくりとした。そこには義母の姿があったからだ。
「はあ、遠くて嫌になっちゃう。どうしてもっと近くに家を買ってくれなかったのかしら」
義母は汗をふきふき、入ってきた。アポなしだが、義母にはよくあることだ。何度かやんわり事前に連絡がほしいとお願いしたが、聞いてくれた試しはない。義母にとって、息子が買ったこの家も自分の家同然、いつでも好きなときにやってきていい場所なのだろう。
「お義母さん、遠いところありがとうございます。絆は十五時くらいには帰ってきますので」
今日は何の用だろう。絆がいればまだ間が持つが帰宅はあと二時間先だ。
義母は大きなおしりをどっかりとソファに落ち着け、背もたれに身体を預けた。
「絆ちゃんには会いたいけど、今日はちょっと雪奈さんの様子を見にきたのよ」
義母はふふんと笑って言う。彼女はいつだって人生の先輩として雪奈に物申したいことがたくさんある様子。しかし、雪奈には義母のすべてが押しつけがましく感じられてならない。
「俊夫がちょっと火遊びをしたみたいじゃない」
驚いた。夫は実の母に自分の不貞を告白したのだ。反省の印だろうか。
「ええと、……はい」
雪奈はなんと言ったものか悩んだが、義母が知っているなら隠し立てする必要もないと思った。もしかしたら、義母は雪奈の味方になろうとしてくれているのかもしれない。
雪奈はわずかな期待とともに、俊夫の不貞についてなるべくやんわり意見を述べようと思った。彼は謝ってくれ、再構築中だ、と。
しかし、口を開く前に義母が言った。
「それであなたが不貞腐れちゃったって? 俊夫が困ってるわよ」
雪奈は微妙な笑顔のまま凍り付いた。旗色が変ってきた。いや、元から雪奈に都合のいい空気ではなかったのだ。