かつて女の子だった人たちへ
「ヒーリング……」

ヒーリングミュージックと銘打たれた動画を見ていたせいだろうか。似た動画としていくつかコンディショニング系の動画のサムネイルが並んでいる。

「ストレッチとか、呼吸とか? セルフケアの動画?」

『疲労困憊な身体の調整法』『心をあげるヒーリング』『セルフ浄化をしてみよう』などのサムネイルを眺め、スクロールさせる。

「なんか変な動画ばっかり」

そう言いながら、画面をスクロールさせる。自分がくさくさした気分であるせいか、雪奈は並んだ動画すべてを馬鹿らしく感じていた。そんなもので救われるなら、苦しむ人間はいないのだ。
『ひどくくたびれてしまったときの心の整え方』
そんなタイトルの動画があった。

「ヒーリングパートナー・クレマチス? 怪し~」

クレマチスの花のアイコンだ。先ほども同じ人があげた動画があったが、このタイトルには少しだけ興味が湧いた。今の雪奈には必要なものに感じられたのだ。

「馬鹿馬鹿しい」

動画を見て、くだらないと笑いとばせば少しは気分が晴れるだろうか。買い物はもう少し夕方でもいいし、時間はある。
クリックして、お茶を淹れにいった。戻ってくると、動画は数分再生されていて、茶色の縦巻きロールの女性が喋っている。綺麗にメイクされた顔立ちはそれなりに整っていて、ふっくらと肉付きのいい女性だ。他の動画のサムネイルで見た化粧っけが薄く、似た雰囲気の独特な女性たちとは空気が違う。デパートの化粧品売り場にでもいそうな美人といえばいいだろうか。

『あなたの心に寄り添えるのはあなた自身。つまり自分で自分を癒してあげることは可能なのです』

声は、デパートの館内放送のような声音だ。邪魔にはならない声調だが、作っている感じはある。年齢は雪奈と同じくらいか、少し上か。
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