かつて女の子だった人たちへ
第2話
「いってきまーす!」
玄関を出て元気に駆けていく息子の背中に、雪奈は手を振った。2年生になってからぐっと大人びた。学習面は問題なく、しっかり者で忘れ物もないと一学期の通知表には書かれていた。友達もたくさんいるようで、週に2度ほど放課後誰かの家に集まって遊んでいる。健やかに成長している絆は雪奈の幸せのすべてといっていいほどだ。どんなことがあっても絆だけは守っていきたい。
「さて」
雪奈は洗濯物ハンガーを物干しにかけた。掃除器ロボットが床を移動している間にシンクの掃除を済ませる。
「カーテン、洗いたいな」
夏前に洗ったのでまだたいして経っていないが、いい天気だと洗ってスッキリしたくなる。
俊夫の浮気という事件があっても、雪奈の毎日は変わらない。
ひとつ変わった点があるとすれば、暇つぶしが増えたということ。
カーテンを外しながら、タブレットで動画を流す。
『こんにちは。まだ暑い日が続いていますね。季節の変わり目は波動が乱れて苦しいという人もいるでしょう。今日はよい波動をうけるためのお話をしていきます』
画面では黒髪ロングヘアの女性が話している。なぜかサリーのような服を着て、ぼそぼそと喋る女性は、おもむろに何か唱えだした。
スピリチュアル系と呼ばれる動画を、雪奈は暇つぶしに見ている。