かつて女の子だった人たちへ
「私は古代エジプトの宮廷に勤めた神官だったの。ユキナさんは私が仕えた王族の姫。たぶん間違いないわ。あなたのカー(精神)が肉体から離れるまでお世話したのは私」
「え……そ、そうなんですか」
「急に驚いたわよね。でも、私は嬉しいの。大好きだった主に時を超えて会えたのだもの。あなたはあの頃から変わらない。とても綺麗なパワーを感じます」

驚きはしたものの、姫と言われてそう悪い気はしなかった。
そして目の前の彼女は本当に無邪気にそう思い込んでいるようなのだ。こちらを騙そうと演技をしているようには見えない。旧知の友に会えた喜びでいっぱいの表情に、雪奈の警戒心は緩み始めていた。

「パワー……あの、私、そういうのよくわからなくて」
「大丈夫。今は感じることができなくても、あなたには清らかな大地のパワーが満ちているわ。仲間たちと交流していくうちに、きっと自分の内なる力に気づくと思うの」
「スピリチュアルの世界にも、造詣が深くなくて……。クレマチスさんのおっしゃる前世もまだピンとこなくて。私みたいな人間が参加してもいいのかと……」

クレマチスは優しく微笑んだ。

「私が感動で興奮したせいで、ユキナさんを混乱させてしまったわね。でも、大丈夫。オンラインサロン自体はすごく気楽な会なの。スピリチュアルな世界観にどっぷりというより、気が合う仲間たちとのお喋り会みたいなものだから」

そう言われて雪奈はホッとした。前世と言われた時は驚いたが、彼女がこちらにすでに親愛の情を抱いているのがわかり、その点は嬉しいと思った。直接会え、話すことができて嬉しいのは雪奈もまた同じだった。
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