かつて女の子だった人たちへ
クレマチスの思いやりなのだ。それならば仕方ない。雪奈は明るい口調で答えた。
「わかりました。他の会場を探してみます」
『急にごめんなさいね。頼りにしてるわ』
電話を切って、雪奈はふうと息をついた。次回のミーティングはもう二週間後だ。急いで探さなければ。
席に戻る前にトイレに寄ろうと向かうと、レストルームの中から話し声が聞こえた。雪奈はドアの前でぴたっと立ち止まる。
「スピリチュアル、ホント勘弁だわー」
それはママ友のひとりの声だ。違う声が聞こえる。
「絆くんママ、すっかり染まっちゃってるよね。お愛想で配信見てたけど、最近割とキツイ」
「最近っていうか、初回から私は結構キツかったな。意識高い系で、最後はスピの先生の話じゃん? こわ~って」
ふたりは男子を育てるママで、今さっきもことさら雪奈を褒めていた。
(は? 裏でこんなこと言ってたの?)
雪奈は戸から手を下ろし、拳を握った。
「女優目指してたとか? まあ、パッとしないからやめたんだろうけど、人とは違いますオーラ出てて、昔から意識は高かったよね~」
「あののめり込み方ってさ、やっぱ家庭がうまくいってないんじゃない? 絆くん、K学の初等部落ちてるんでしょ。ショックでそっち系に救いを求めちゃったのかな」
「あとはダンナにかまってもらえてないかだよねぇ」
好き勝手に想像され、陰口をたたかれる雪奈の生活。怒りで目の前がくらくらした。
今すぐこのドアを開けて、怒鳴り散らしてやりたい。『裏でそんなこと言うなら、見なくていい。あんたたちなんか、なんにもわからない馬鹿なのに!』
しかし、彼女たちは絆の友達のママだ。この先、六年生まで付き合いが続く。雪奈がキレて終わりならいいが、絆の友人関係に影響が出るのは間違いないだろう。
雪奈はぐっと怒りをこらえ、トイレに寄らずに席に戻った。
「わかりました。他の会場を探してみます」
『急にごめんなさいね。頼りにしてるわ』
電話を切って、雪奈はふうと息をついた。次回のミーティングはもう二週間後だ。急いで探さなければ。
席に戻る前にトイレに寄ろうと向かうと、レストルームの中から話し声が聞こえた。雪奈はドアの前でぴたっと立ち止まる。
「スピリチュアル、ホント勘弁だわー」
それはママ友のひとりの声だ。違う声が聞こえる。
「絆くんママ、すっかり染まっちゃってるよね。お愛想で配信見てたけど、最近割とキツイ」
「最近っていうか、初回から私は結構キツかったな。意識高い系で、最後はスピの先生の話じゃん? こわ~って」
ふたりは男子を育てるママで、今さっきもことさら雪奈を褒めていた。
(は? 裏でこんなこと言ってたの?)
雪奈は戸から手を下ろし、拳を握った。
「女優目指してたとか? まあ、パッとしないからやめたんだろうけど、人とは違いますオーラ出てて、昔から意識は高かったよね~」
「あののめり込み方ってさ、やっぱ家庭がうまくいってないんじゃない? 絆くん、K学の初等部落ちてるんでしょ。ショックでそっち系に救いを求めちゃったのかな」
「あとはダンナにかまってもらえてないかだよねぇ」
好き勝手に想像され、陰口をたたかれる雪奈の生活。怒りで目の前がくらくらした。
今すぐこのドアを開けて、怒鳴り散らしてやりたい。『裏でそんなこと言うなら、見なくていい。あんたたちなんか、なんにもわからない馬鹿なのに!』
しかし、彼女たちは絆の友達のママだ。この先、六年生まで付き合いが続く。雪奈がキレて終わりならいいが、絆の友人関係に影響が出るのは間違いないだろう。
雪奈はぐっと怒りをこらえ、トイレに寄らずに席に戻った。