かつて女の子だった人たちへ
「絆くんママ、おかえりなさい」

もうふたりのママ友は笑顔で談笑していた。このふたりは女の子のママで、穏やかな気質に見えるが、彼女たちも裏では雪奈を馬鹿にしているのだろうか。スピリチュアルにかぶれたと笑っているのだろうか。
胸が悪くなるようだった。先ほど食べたランチコースが戻ってきそうだ。

「ごめんなさい。仕事の関係で出なければいけなくなっちゃった。今日はお先に」
「そうなの? また、ランチしましょうね」

そんな当たり前の返事すら疑わしい。
雪奈は足早に自宅に戻った。不快感と怒りで煮え立つようだった。

(なにもわかっていないくせに。見えているもので満足して、くだらない生活をしているくせに)

鞄の中で鍵を探すが、見つからない。苛立って、ついに鞄を玄関先にたたきつけてしまった。鍵とスマホがバッグからのぞく。

「どうして、あんなヤツらに馬鹿にされないといけないの?」

いや、これもきっと必然なのだ。雪奈は自分に言い聞かせる。理解できない人間と付き合っても無駄だ。それこそ魂を卑しくしてしまう。
次回の配信からはママ友に告知しない。そうすることで、見なくていいという意思表示にしよう。

「私はあんな人たちと違う」

信頼できる師と出会い、特別な素質を見抜いてもらえた。彼女とともに苦しむ人をこの手で救っていく。それが雪奈の使命だ。
いつか、クレマチスとともにアジアの寺院を訪れたい。そこでじっくり自分を見つめ直し、修行をして力を高めたい。雪奈には夢が生まれていた。
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